続 丹波包丁日記 〜海老芋雑煮〜
春先の和え物といえば「てっぱえ」。てっぱえとは鉄砲和えが訛ったもので、別名ヌタともいう。
ヌタとはねっとりしたという意味で、「沼田」のこと。普通は分葱(ワケギ)と魚介類などを
芥子酢味噌で和えたものをいう。京都でも、てっぱえと呼ぶらしいが、以前住んでいた
讃岐(香川)でも、鮒のてっぱえは郷土料理であった。
名の由来は、材料の分葱を湯がくときに、中の空気が膨張して「パンパン」と鉄砲のような
威勢のよい音が出るからだ。
また、麺棒を押し当てて分葱の水分とヌメリを取るときに、中の芯が鉄砲のようにピュッと
飛び出すことからその名があるという人もいるが、その時にも、中の空気がはじけて
鉄砲のような音がする。
分葱と和える材料は鳥賊、海老などのほか、春に旬を迎える貝類を合わせることが多い。
分葱の清涼感と酢味噌のまったり感が混ざりあって調子の高い料理が出来る。
美味しい「てっぱえ」を作ろうと思えば、美味しい和え衣を作ることが大事。
上等の白味噌に卵黄、日本酒、砂糖を鍋に入れて弱火で練る。
冷ました味噌に、溶き芥子と米酢を入れて混ぜ合わせ、食べる直前に、
色よく湯がいた分葱と好みの魚介類を和える。
天盛りに柚子の皮の細切か蜜柑の皮の干したものを盛っても美味しい。
ヌタの黄色と分葱の爽やかな緑色に赤や白の魚介がからみあって、
誠に春らしい景色の一品といえよう。
写真・文章
丹波市山南町にある日本料理・スッポン料理の
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