続 丹波包丁日記 〜鮎すし〜
梅雨に入って美味しくなるものとして、川魚では、鮎、海魚では鱧(ハモ)、
蛸(たこ)などが挙げられる。ともに梅雨の雨を吸って美味しく成長するものである。
鮎は早春の氷魚に始まり、若葉溢れる頃の若鮎、この頃の鮎は動物性なのだが、
梅雨に入り川の水高が増して、川底の石に水苔が付いてくると、鮎は植物性となり水苔を
餌とするようになる。香魚といわれるその香りは、そうして生まれるものらしい。
よく鮎の美味しい食べ方は?と聞かれるが、鮎は、塩焼き・田楽。洗い・てんぷら・鮎飯と
何にしても総じてうまい。それよりも鮎は、食べ方うんぬんよりも、まず、天然のうまい鮎を
求めるところが大事だ。
いまや一部の天然物を除いて、そのほとんどが養殖鮎に占められるのが現状だが、
幸い私の住んでいる山南町の川代渓谷では、天然の鮎がたくさん捕れる。
渓谷で育った鮎は、梅雨明けの解禁の頃には元気で大きく育っている。
どうしても天然ものが手に入るが無理ならば養殖もので間に合わせてもよいが、
川魚は海の魚に比べて鮮度が落ちやすいので、何をさておいても新鮮なものを
求めることが一番だ。
今回は鮎すしを作ってみた。鮎すしは全国至るところに名物がある。うちの店では、
鮎を照り焼きにしたものと、酢飯にしたものの2通りの鮎すしをよく作る。
伝統的な酢飯のほうは、しばらく寝かせてよくなじましたほうが美味しく、
珍しい照り焼き風のすしは、香ばしくて、川魚の苦手な方にも美味しいと喜んでいただける。
写真・文章
丹波市山南町にある日本料理・スッポン料理の
お店「茶寮ひさご」店主 真鍋馨様ご提供
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