続 丹波包丁日記 〜 早春の山菜サラダ盛り 〜
私が小さい頃は、冬といえば寒いものだった。人間とは自分勝手なもので、
地球温暖化の暖冬に慣れた身には、毎日がこうも寒いと暖かい春が待ち遠しいものだ。
私の尊敬する辻嘉一氏は生前に「春に山菜が出てくるのは、寒い冬に生理的に
濃厚な食べ物を摂るうえに、運動不足で身体や胃腸の状態が重い。
整腸作用のある山菜を春に食べるのは人間の道理である。」と言われていた。
その山菜の中で、一番早く出るのが蕗の董。深い雪に覆われた大地にでも、
蕗の董はしっかりと芽を出している。
筍といえば、春イメージがあるが、寒中の筍というものをご存知だろうか。
うちの店では、毎年暮の12月から生の筍を使うが、大寒の頃でも竹林の土中深く掘り起すと、
竹の根の先に親指程の筍が出来ている。暖かい地方では、もっと大きく成長しているかもしれない。
今頃に出る生の筍なら、国産では九州産の頃合いのものが出回っている。
今回は、早掘りの筍をメインにした、「早春の山菜サラダ盛り」という一品を作った。
大きくて価格が手ごろな中国産もあるが、味わいは国産よりも落ちるので、
調味せずに素材そのものをサラダ感覚で味わうなら、風味のある新鮮な国産をお勧めする。
湯がいた筍に蕗の董、タラの芽、こごみ、うど、ウルイなどを盛り合わせ、海老に貝や白身魚などの
魚介類をあしらって、酢味噌や好みのドレッシングをかけると相性がよく、早春を満喫できる。
写真・文章
丹波市山南町にある日本料理・スッポン料理の
お店「茶寮ひさご」店主 真鍋馨様ご提供
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