前回、『唐辛子』の辛味を例に、『五味』についてのプロローグ的なお話をしました。それぞれの味は無意味でなく意味があるということです。興味をもたれたでしょうか?『味』についての今回は、東洋医学の食養論としての基本である法則についてお話します。五味には身体に働きかける作用があります。例えば『酸』すっぱいものは内臓の熱を収め、脱水に用い下痢を収めるなど、収の働きがあります。これに対し、『辛』辛いものは熱を発散し、小便を出す散の働きがあります。
また、『鹹(かん)』塩辛い(ミネラル)ものは堅い物を潤し軟らかくして下す働きがあり、それに対し『苦』苦いものは湿熱を除くため、乾燥し堅くして排泄します。そして、『甘』甘いものは、身体を補い緩める働きがあります。左の図1は五行説「木火土金水」の土王説バージョンで、漢方理論で使う五行説と使い分けなければなりません。専門家でも混同している場合があります。図2.に臓腑名を入れておきました。味が作用を及ぼす臓腑です(注、西洋医学の臓腑と同一ではありません。)また別の機会に詳しくお話します。
『味付けに失敗しちゃった』さて、身近な役立つ話題に変えましょう。お料理をしていて、味付けに失敗し甘すぎた!辛過ぎた!ってことはよくあることです。そこで図2.が役に立ちます。
これは『五味の毒消し』です。前回お話しました、『辛』辛過ぎるものには『酸』すっぱいものを加えると辛さもましになり、毒も消します。『酸』酸っぱ過ぎるものには逆に『辛』辛味を足せばいいわけです。『苦』苦いものには『鹹』塩辛いもの、沖縄のゴーヤチャンプルが苦いゴーヤと塩ブタで料理しますね。『甘』甘すぎたものには、『苦』いもの、甘いチョコの駄目な方もビターなチョコなら食べられますよね。『鹹』塩から過ぎたものには、『甘』甘い物を加えると緩和されます。鯖のヘシコ(『鹹』)を炊き立てのご飯(『甘』)で食べると美味しいですよね。スイカに塩を少し、ぜんざいに少し塩をするのは甘さを増すためにする逆バージョンです。これを覚えるといろいろな料理に応用でき、創作料理も美味しくできます。是非、お試しください。
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