前回、東洋医学の食養論としての基本である法則についてお話ししました。『味』にはそれぞれ意味があり、身体に作用することをお分かりいただいたでしょうか?今回は『五味』(酸・苦・甘・辛・鹹(かん))それぞれの味と作用について5回に分けて一つずつ、詳しくお話して見ましょう。
『酸味は肝を補う』
疲れたとき、酸っぱいものを摂ると疲れが取れますね。疲れが溜まる状態というのは、体内の老廃物が肝臓での解毒分解処理の能力が低下した状態、つまり肝臓の機能が低下している(虚している)状態です。そんな時、適度に黒酢を飲んだり、酸っぱいものを補うと体の中の糖質代謝を促しエネルギーを発生させる元となるクエン酸回路(TCAサイクル)が活性化し元気になります。また、お酒を飲むとき、酢の物を食べたり、レモンや柑橘系のもので割ったりして飲むと悪酔い防止になります。これはお酒(辛味)の毒消しとしての酸味の働きとして前にも述べましたが、肝臓の解毒機能をアップさせると考えると納得できますよね。でも、酢の摂りすぎは返って肝を傷めます。何でもほどほどが肝心ですから注意してくださいね。
東洋医学で言う『肝』は西洋医学の肝臓だけの臓腑の意味ではありません。ホルモンや内外分泌の調和、造血機能、自己免疫機構の正常化など機能も含めたがものが『肝』の概念です。ここでは、味の話なので簡単にお話します。東洋医学で『肝』に関係の深いとされるものに、『筋』と『目』、『爪』があります。『肝』が弱ると『筋』が引きつります。また、『目』も疲れやすくなります。目に良いとされるブルベリーは酸っぱいですよね。『爪』も艶がなくなったり、薄くはがれ易くなります。情緒的には『肝』の疏泄がうまくいかなくなるとイライラして怒りっぽくなります。怒ってばかりいる人、『肝』に気を付けて下さいね。
この他に『酸味』に分類される食べ物として、ローヤルゼリーや、バラ科の植物のスモモ、りんご、杏、梅、(梨は甘)、柑橘類のみかん、ゆず、レモン、金柑、橙などがあります。
『酸味』にはもう一つ『潤す』という働きがあります。梅やみかんは身体を冷やすという食養生家がいますが、酸は潤す働きの結果、水が集まりその結果冷え易くなるということで、直接冷やす働きはありません。夏に梅酒をよく飲むのは潤す働きと『酸』の疲れを取る働きで夏ばて予防かもしれませんね。さあ、疲れている方、酸っぱいもの食べて元気を出しましょう!!!