前回は、丹波の名産の『黒豆』・『山の芋』について前々回・前回と漢方薬の立場から取り上げ、ご紹介しました。もう一つ代表的なのが、この度『黒さや会』のご努力で復活した大納言小豆。今回は、アズキ・生薬名『赤小豆』についてお話します。
アズキで豊作を占う
小正月(1月15日)はアズキ粥を食べて、その年の邪気を除くという風習は、いまも続いています。このときのアズキ粥のでき、ふできでその年の農作物の豊作、凶作を占ったりもします。現在、アズキは『小豆』と書きますが、昔の本『本草和名』(918年)には『赤小豆』と出ていてアカアズキと読ませ、江戸時代には『赤小豆』をアズキと読むようになり、赤の字を取って『小豆』だけになりました。しかし漢方の世界ではいまも頑固に『赤小豆』です。
なぜか日本人に好まれる『赤小豆』は日本の食文化?!
『赤小豆』の原産地は中国南部、熱帯アジア地域とも言われています。中国や朝鮮、日本など東アジア地域で栽培されていますが、日本での栽培量が最も多く、なかでも北海道が生産量は一番です。アズキは日本人にだけ好まれる特異な存在で、赤飯やおこわ、アズキ餅、アンにして和菓子など広く使われています。中国のアンは緑豆(リョクズ)を使うので赤小豆の栽培量は意外に少量です。
日本が自給自足できている数少ない食赤小豆と鯉魚(コイ)で腎炎や脚気の浮腫に
『赤小豆』には薬理作用として利尿・解毒・消炎・緩下の作用があり、漢方的には清熱利水・散血消腫といいます。その利尿と消腫作用を使い、黒鯉の利尿作用を加えるとさらに強まり、腎炎や脚気の浮腫や時には癌の腹水などが取れたりもします。赤小豆鯉魚湯といって、赤小豆90g 鯉魚1匹(約500g) 酢と水を半々にして1時間煎じて、まず鯉魚を食べ、あと煮汁を服用します。(かなりエグイ)しかし、どうしても取れなかった腹水がこれで取れた例もあるのであなどれません。また、皮膚病の白斑(しろなまず・白癜風)に赤小豆の皮からとった赤小豆エキスを毎日、患部の白斑の肌に塗布すると効果があり、白斑部が消失することがあります。調べてみるとその効果は普通のアズキより大納言小豆のほうが強いようです。やはり前回同様、丹波のものは一味もふた味もちがいますね。
大納言小豆は丹波独特のもの
京菓子作りに欠かせない大納言小豆は、その粒の大きさと煮つめても形が壊れないのが最大の特徴で小豆自体にも甘味があり珍重されます。殿中松の廊下ではありませんが、殿中で刀のさやを抜いても(抜刀しても)許される大納言、さやを取って煮ても決して煮崩れせず腹を割らない、つまり切腹しないことから大納言といわれると聞きました。面白いネーミングですね。
トップへ