前回は、シリーズとして『芍薬(しゃくやく)』を取り上げ、漢方薬に使われる身近な薬草・生薬(しょうやく)をご紹介しました。第四回目は甘草(かんぞう)。その名の通り甘く、食品添加物の甘味料・着色料として醤油、漬物をはじめ身近に多く使われています。
『百薬の毒を解す』・『百薬を調和する』
甘草は、ウラル地方、シベリア、中国北部に分布するマメ科の多年草で、薬用部は根及び根茎を使います。日本に自生していません。日本でいうカンゾウ(萱草)は、ユリ科の植物で全く別の植物です。
甘草は、別名「国老(こくろう)」といいます。他の薬物の効能を高めたり、毒性を緩和し、諸薬の薬効を調和させる働きがあり、処方中の薬(君薬、臣薬、佐薬、使薬)のまとめ役の家老のようであるので、一目置かれその名がついたようです。そのため、漢方薬の中で最も多く配合されています。
『甘草のすごい効き目』
甘草の主な成分は、グリチルリチンで、これにはステロイドに似た作用(ステロイド様作用)としての炎症を鎮める作用(抗炎症作用)や(潰瘍を防ぐ作用)抗潰瘍作用があり、ステロイドではないので安心して使えます。特に肝機能改善薬として広く使われ、近年、エイズ治療薬としても注目されました。作用をまとめると次のようになります。
@ 滋養作用、風邪の時の補助ドリンクや栄養ドリンクなどにたくさん入っています。滋養を増すためには甘草を炒めて炙甘草(しゃかんぞう)として使います。
A 消炎作用、喉の炎症や口内炎などには甘草湯として、痔の激しい痛み、炎症などには忘憂湯(外用)として甘草単味で使用します。直接患部に薬液が触れることで効果が上がります。桔梗を加えて肺炎などに使用することもあります。
B 止痛作用、芍薬を加えて芍薬甘草湯になると筋肉や平滑筋の痙攣による痛みに大変効果があります。コムラ返りや、胆石症や胃十二指腸潰瘍などの胃痙攣、腹痛などには、即効でよく効きます。
C 調和作用、他の生薬の刺激性や毒性を緩和します。便秘に大黄がよく使われますが、大黄単味よりも甘草を加えると作用が穏やかになるばかりか、習慣性も少なくなり、甘草が腸の粘膜を修復することにより便秘症が治っていきます。
D 鎮咳作用、甘草は補助的な役割ですが、麻黄や石膏の癖の強い生薬の前に述べた『国老』となり調和させ咳を鎮めます。
甘草の過剰摂取による副作用として、浮腫、血圧上昇、低カリウム血症などに注意が必要ですので、使用するときは専門家にご相談ください。
甘草を煎じた液に紙を浸し、染込んだ紙をソゲの刺さった所に貼り付けるとソゲが自然に抜けると聞いたことがあります。巣鴨のそげ抜き地蔵のお札もそうであったとか…?。
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