前回まで7回にわたり知って得する『味』の話として、五味のそれぞれの効果や関連についてお話しました。今回からは漢方薬に使われる身近な薬草や生薬(しょうやく)についてお話していきたいと思います。そもそも漢方薬とはなんでしょうか?
漢方薬と民間薬
「漢方薬のセンナを飲んでいます。」「漢方薬のウコンを飲んでいます。」と言われることがあります。センナやウコンは漢方薬でしょうか?
センナは民間薬であり、漢方薬ではありません。ウコンは生薬の一つであり漢方薬ではありません。
漢方というのは二種類から十数種類の生薬(薬味)を漢方の古典に基づき、配合したものです。(例外として独参湯、甘草湯は一種類です。)一般に薬味の数が少ないほど、効果は鋭くなります。
配合には一定の法則があり、量や比率が決まっています。これらの量や比率は生薬どうしの相乗的な作用を考え、二千年の昔より繰り返し試され、決められた尊い大切な法則です。しかしながら、現在市販されている漢方薬のほとんどが、これらの原典を無視し本来の処方量より少ない生薬量で造られているのは、理由はどうであれ残念なことです。
病名で選ばれている漢方薬
風邪に葛根湯、腎炎に五苓散というように病名で漢方薬を決めるやり方は、単に漢方薬を西洋医学的に使っただけであり、本来の漢方医学の『証(しょう)』(気血水・虚実・三陰三陽・寒熱・六臓六腑)に基づいて患者さん一人ひとりに合わせて造るオーダーメイドの漢方治療とは全く異なります。ですから十分な効果は期待できません。なぜなら、同じ肝臓病でも何十種類もの漢方薬があります。もし病名で一つの漢方薬を選ぶなら、効果の出る確率は何十分の一となるからです。
同じ病名でも『証』が違えば、異なる漢方薬を使います。
異なる病名でも『証』が同じなら、同じ漢方薬を使います。
漢方薬は根本治療
漢方薬は生活習慣病や慢性病に良く効きます。高血圧、糖尿病、アレルギー疾患や腰痛、神経痛、関節痛、リウマチなどです。また、メニエル氏病などめまいには抜群の効果を発揮します。漢方治療はただ痛みをとったり、症状を抑えるだけの対症療法ではなく、原因を取り除く根本治療です。例えば、糖尿病を漢方薬でただ治すのではなく、糖尿病になった生活を直す養生法があって初めて漢方治療となるからです。『薬は三分、養生七分』です。
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