自然保護の知識と行動

地球は閉鎖系です その3
 



 

 もしも地球が解放系であったら地球上の物質はどうなっていたことでしょう。こんなことはありえませんが、地球上の一度使われた古い元素は地球外へ飛び去り、常に新しい生元素が供給できるような状況であったら、地球上の物質の形態は常に大きく変化し、奇想天外な物質構成になっていたことでしょう。

人間にとって都合の悪い古い元素は宇宙へ捨てられ、常に新しい生元素を得られるとしたら、人間がいくら汚して元素構成を変えても自然は回復し、常に人間に都合の良い状態に保つことができるでしょう。

しかし残念ながらわれわれのこの地球は閉鎖系なのです。
よって、元素は常に再構成し物質を形成し再利用し続けるしかないのです。
私たち人間の体は水素・酸素・炭素・窒素などの元素でできています。

私の髪の毛の炭素はかって恐竜時代にはティラノザウルスの目玉だった炭素かもしれません。あるいは二酸化炭素として木の中にあった炭素であるかもしれません。窒素は地球の大気に78%も含まれていますが、私たち人間は窒素を呼吸して生きているのではありません。大気中に二番目に多い酸素(21%)を呼吸で取り込み生きています。

直接大気から窒素を取り込み生きているのは細菌や藍藻類や地衣などに限られています。それは、彼らの遺伝子は、何億年も前のはるかなる過去に窒素を利用して生きていた歴史を経験しているということです。太陽の光と二酸化炭素を利用し光合成をする植物が増え大気中に酸素が増え大気の元素構成を変えました。動物はその酸素を取り込み繁栄したと推測できるのです。
元素の再構成は地球の歴史に大きく関わっています。
生元素は容易に供給されることはありません。

すべての元素は絶えず再合成され形を変えながら循環の旅をしているのです。
自然の回復力を上回るスピードで化学物質を地上に放出拡散すれば自然は急激に環境変化してしまいます。人類は何百万年という長い年月をかけて自然環境に適合して繁栄してきました。しかし大きく急激に大気の元素の構成を変えてしまっては、人類はその変化についていけず危機に陥ります。
その意味でも人間は地上自然環境を変えてはならないということです。


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高見豊

日本野外生活推進協会

 

 
 
 
 
             
 
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