煉瓦について
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昨年の11月鐘ヶ坂の平成トンネルの開通に伴い脚光を浴びたのが、その初代先輩格に当たる明治の遂道である。明治12年大山宮の園田多祐氏と氷上郡長:田艇吉氏他7名が発起人となり、鐘ヶ坂遂道開鑿之義願書を兵庫県に提出し、翌年12月に許可となり、総工費4万余円、鑿岩工夫は6萬3千人、2年10ヶ月を要して完成した。工事費の半額は、多紀・氷上両民の寄付でまかなった。日本で5番目に作られたトンネルで、レンガ積みとしてはわが国最古といわれている。麓の柏原上小倉で3基の釜が作られ、鹿児島からやってきた職人がレンガを焼き、約28万枚の煉瓦が使われている。今回はその煉瓦について記したい。
○レンガ=(せん)
・煉瓦は粘土や石、泥を型に入れ、窯で焼き固めたり、圧縮乾燥して作られる建築土木材料のこと。身近にある「土」を使って容易に作ることが出来るため、世界各地で最も古くから使われてきた。今から約1万年前からメソポタミア文明で始まったといわれ、古くは、乾燥させただけの日干し煉瓦が使われた。その後エジプトでも煉瓦が建築物に使われ、最も古いピラミッドの中にも、内部の壁に乾燥レンガを用いているものが見られる。その技術が地中海沿岸やインド、中国に伝わっていったと考えられている。
・中国ではレンガのことをセン(注)(せん)と呼ぶ。セン(注)は中国の焼成煉瓦のことで、前1027〜前771年には後代の「詩経」陳風に記述されている。前677〜前383年には秦(中国)の雍城でセン(注)が使われ、万里の長城もその大半が「セン(注)」でできている。
・わが国には、中国大陸から仏教建築を建てるための技術の一端として伝わり、当時の日本では主に寺院建築の基壇や土間、壁に使われた。仏教伝来の50年後の西暦588年に、仏教寺院建築のために、瓦の製造技術が、工人とともに朝鮮の百済から伝えられているが、それと相前後して伝わったとされており、当時都であった飛鳥の周辺に築いた窯で製作されたと考えられる。仏像を浮彫にした仏セン(注)としても用いられ、寺院の仏殿の壁に張られたり、仏堂の腰壁にはめこんだり、当初はもっぱら内壁の装飾として使用された。
(注)セン= |