撮影  上井 明 様

丹波の山鯨

雪はちらちら丹波の宿にシシが飛び込む牡丹鍋 とデカンショ節にあるように丹波の冬の味覚は牡丹鍋。丹波ではイノシシのことをシシと呼ぶが、厳寒の丹波では、あたたまる牡丹鍋と地酒の熱燗は欠かせない。

丹波はイノシシの名産地。全国から獲れたイノシシが丹波に集まり、丹波産として年関数千頭を全国に出荷。シシ肉は「山鯨」といわれ、脂ののった冬季の肉が最高で、特に丹波の猪肉は他地方に比べ格別味がよく、その白身が縁取る肉色の美しさから牡丹鍋として親しまれている。

樋口清一先生によれば、丹波のイノシシは、ニホンイノシシ。現在200〜300頭、広葉落葉樹の里山に生息。特に多紀連山と弥十朗岳の山塊に多い。夜行性の雑食性で、木の実、フジ、クズ、チガヤ、ミゾソバの根、ミミズ、サワガニ、ヘビ、カエル、ムカデ等を食し、特に筍、ヤマノイモ、豆類、乳熟期の稲を好む。繁殖は冬季交尾、四ヵ月後1〜6頭出産。生まれて縦縞模様のある3か月までを「瓜坊」と呼ぶ。母子家族で雄は単独行動。20年から25年が寿命。体重50〜100`。60`猪で200人分の猪肉が取れる。犬カキ成らぬ猪カキで泳ぐ事もできる。

猪のいる山に入ると1畳ほどの荒れた水溜りがある。ヌタ場と呼び、転がり泥をつける猪風呂である。

丹波の山際には、作物を荒らされないようにトタン板の猪ガキが続く。1mにも満たない高さでも、前脚の短い猪の予防には効果的。朝霧の中、このトタン板が朝日に反射してきらきら光る様は、丹波ならではの情景である。霧の靄の中に陽光の帯がさし込み、きらきらと反射し、存在感のある黒いどっしりとした民家とのコントラストを初めて目にしたときの感動は、今も忘れられない。その後何度も見たいと思うのだが、なかなか反射している場に出会わない、反射していても霧が無かったり、うまくいかない。だからこそもう一度見たいと思うのだが…、年明け早々に目にした人は、今年はいいことがあると思いますよ。…ウッシシシ……なんてね。これは牛か−。ちなみに私は亥年である。

 

             
 
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