丹波の朝霧
・名にし負う「丹波霧」を全国に知らしめたのは、日本画家;小川芋銭が描いた「丹波の朝霧」が公開されてからである。芋銭は、郷里の茨城県牛久村を中心に農村風景を好んで俳味のある水墨画や淡彩画に描いたことで知られている。美濃坂峠から描いたとされる霧に煙る丹波の風景は、肥えた芋銭の目にも、故郷と同様に優れていたことを物語るものといえよう。
・気象学では「霧」は、視界が水平距離で1km未満(1km以上は靄)の場合を言う。ごく小さな水滴が大気中を浮遊し、光の直進を妨げる現象のこと。丹波は典型的な盆地霧で、水蒸気を多く含んだ空気に山の冷気が潜り込んで発生し、盆地で風が弱いためベールをかぶせたようになる。青黒い山々を背景にすると最も詩的で美しいといわれ、篠山では、年間60日あまり、晩秋10〜15日程度の濃霧があり、湿潤な大気が農作物だけでなくツクバネガシやキクバゴケ等の生育につながり、昼夜の気温差が紅葉の美しさに結びついている。
・なお、美濃阪峠は標高490m。今も丹波盆地が一望される。現在、峠脇に小広場の展望台が整備されている。一度朝霧の初秋に登ってみるのもいかが……穴場です。
丹波里学博士 ノンノン |