丹波は古くから京の玄関口として栄え、美しい森と情緒あふれる里の調和した景観を守ってきました。何十世代にも渡る、私たちの祖先からの行動の積み重ねが、今に繋がっているのです。
しかし、特に近年、田舎と呼ばれるここ丹波においても、環境の劣化が著しくなってきました。戦後の植林計画により、自然林は1パーセントをはるかに下回り、自然植生は神社の社叢林などを除いてほとんど見られなくなりました。植栽されたスギ−ヒノキ林は、国産材の価値低下とともに放置され、花粉症の原因として私たちを悩ませています。雑木林も薪炭需要が著しく低下したことから放置され藪となり、またこれらは里に近いため鹿や猪の隠れ家となり夜になれば田畑に害を与えます。
夜になれば星がきれいですが、自家用車使用率が非常に高く、排気ガスを大気に撒き散らしています。工場からの煤煙が空気を汚し、汚水が川から魚を奪います。
丹波地域は分水界に位置し(篠山市大沢:加古川と武庫川 氷上町石生<水分れ>:加古川と由良川)、それら河川の流域には西宮市、神戸市、篠山市、丹波市、加古川市、三田市、宝塚市、伊丹市、加東市、高砂市、小野市、三木市、西脇市、福知山市、南丹市、京丹波町、綾部市、舞鶴市など、兵庫県と京都府の約20の市町に及ぶ広大な流域面積をもっています。本来、丹波地域それ自体が源流地域として美しい環境を誇るべきですが、現状を考えれば、その中でも最上流を辿らないと、ほんものの美しい自然環境には出会えなくなっています。
この丹波から、一歩ずつでも、美しい環境を保全育成しようという願いから、丹波環境基金が始まりました。丹波環境基金は、皆様からの募金・かっぱダービーin丹波の売上の一部・丹波食文化発信機構「たんばる」商品販売収益の一部などから積み立てられ、一定額ごとに環境保全団体等に助成されます。助成対象事業は、@希少動植物の保護A自然植生の恢復B里山整備C水資源の浄化D都市と農村の自然環境保全交流 など、環境保全に関するものであれば広く助成対象として認定されます。
都市部では、緑がない、空気が汚れている、河川にゴミが散乱し腐敗臭がするなどの現状があり、丹波などの「田舎」と呼ばれる地域を訪れると、いかにも「美しい自然」に溢れているように思います。確かに、緑自体はたくさんあります。水もきれいに見えます。満天の星空も見られます。けれども実際は、放置林が増加し、田んぼにはカブトエビやタガメが農薬のために生息できず、トラックがひっきりなしに往来します。都市部であれば、木々を数本植栽すれば「緑化」と言え環境保全につながりますが、ここ丹波という「源流の里」では、より高次なものを求める必要があるのです。
もっとも大切なことは、私たち一人ひとりの、環境に対する意識と行動です。 |