続 丹波包丁日記

〜 柚子 〜


 

 

 

 


写真・文章

丹波市山南町にある日本料理・スッポン料理の
お店「茶寮ひさご」店主 真鍋馨様ご提供

 

 柚子は丹波では馴染みが深い。丹波や京都では「柚ゆう」とも呼び、京都では三尾のひとつである水尾の柚子が有名。

  日本料理では、柚子は初夏の花柚子に始まり、夏の実柚子、青柚子、秋冬に色づいて黄柚子となり、春の木の芽が出る頃まで使う。

  柚子は、吸い口に使うほか、細かく下ろして和え物やすし飯に混ぜたり、果汁をポン酢醤油や出しにも利用する。中身をくり抜いて柚子釜にして料理を盛り込んだり、柚子釜の中に材料を入れて蒸すか焼くなりして柚子を丸ごと料理に使うこともある。柚子の中身をくりぬいて味噌や米粉や上新粉を詰めて蒸し上げた名産「ゆべし」は各地にある。京菓子の世界では、柚子は芸術的にまで昇華した菓子となり、賓客のもてなしにも使われる。ほかには、柚子茶、柚子酒、柚子ジュースなど様々ある。柚子そのものの姿を模した器に至っては、珍味入れから蓋物、香合など高級な京焼から普段使いの瀬戸物まで陶磁器の範疇では多くある。そうそう、冬至の柚子風呂も忘れてはならない行事のひとつ。

  先日、京都の知り合いから珍しい柚子の菓子をいただいた。京都と東京の大丸百貨店でしか手に入らない「柚子小丸」という菓子。柚子の中身を丁寧にくりぬき、中には寒天と大納言小豆入れて固めてある風流な菓子だ。高級菓子の常で日持ちしない。食べてみると、しっとりとした甘蜜とほのかな柚子の苦味と香りがする優雅な菓子だった。

  この菓子に刺激されて私も「柚子釜蒸」という料理を作ってみた。これは、黄色く色づいた柚子の中身をくりぬいた中に鶏肉や好みの魚介類を入れる。これに茶碗蒸しの出しか卵黄で調理した白味噌を入れて火が通るまで蒸す。出来た料理の上面だけを軽く焼くと一層うまい。熱々を匙ですくって食べる。辺りが紅葉色に色づく雰囲気の中で食べることができれば最高。

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